「シ〜ンジ、夜ご飯な〜に?」



アスカは台所で夕ご飯の準備をしているシンジにたずねた

「えっと・・・今夜はのらぼうのおひたしと豚汁と・・・」

「ハンバーグは!?」

「え、ハンバーグは一昨日食べたばかり・・・」

「いいでしょ!別に」

「・・・アスカ、もう夕ご飯作っちゃてるんだけどさ・・・」

「何よ、役に立たない男ね!あたしの食べたいものぐらい考えてよ〜!お風呂は沸かしてくれた?」

「あ、うん、お風呂は沸かしたよ」

「んじゃ、入ってくるね」「シ〜ンちゃん♪お姉さん、おつまみ作ってほしいんだけどな〜」

「今、夕ご飯作ってるので後で…ってミサトさん!えびちゅは一日五本までって約束したじゃないですか!6本目はダメですよ!」

「んもう、けちぃ!いいじゃない、えびちゅ一本ぐらい〜」ドタドタドタドタ・・・バタン!

「あつーーーい!!ちょっとバカシンジ!風呂の温度は39.5℃ジャストだって言ったでしょ!」


「・・・・・ごめん」


「シ〜ンちゃン、おつまみは?」「聞いてんの?シンジ!」
「・・・もう・・・」

『ん?』





ばったり





『あ・・・』



大ピンチ!    written by メラミ様




リツコの研究室・・・

「貴方たちは一体何やってるの!」

現在、リツコがアスカとミサトに事情徴収しているところである

「一体これは何!」

リツコの手には一枚の紙があった
それには・・・”シンジの一日のスケジュール”と書いてあった

「信じられない・・・こんな・・・ミサトっ!これは本当なの!?」

「・・・へい、本当です・・・」

ミサトが珍しく縮こまっていた。恐らく、その紙の内容はミサトが書いたのだろう
そこには・・・




5:00    シンジ起床
5:10    掃除機をかける、学校の準備
5:45    お弁当作りをはじめる、洗濯開始
6:00    お風呂を沸かし始める   
6:40    洗濯を干す、アスカを起こす
6:45    お弁当完成、アスカ入浴
6:50    ミサトを起こす     
7:15    朝ごはんを食べ始める
7:30    学校へ行く
17:00   帰宅       
17:15   洗濯物取り込む
17:30   夕ご飯の下準備開始
18:00   ミサト帰宅
18:15   お風呂沸かし始める(たまに温めなおす)
18:40   アスカ入浴、シンジ復習をはじめる   
19:20   シンジ夕ご飯を作り始める、ミサト入浴
20:00   夕ご飯を食べ始める
20:30   洗い物開始
20:45   シンジ入浴
21:00   アスカがシンジに甘える、ミサト就寝
21:40   シンジ翌日の朝ごはんと弁当の下準備開始、アスカ就寝
22:40   翌日の予習開始、自由時間
24:00〜  シンジ就寝

なお、土曜日は学校の変わりにアスカの荷物もち(デート)、日曜日も学校の変わりにネルフに行く





「信じられない・・・よくこんなんで生きてられるわね、シンジ君」

リツコは深い、深いため息をついた

「た、確かに・・・今更だけどかなり負担かけてたわね・・・ところでシンちゃんの倒れた原因って・・・」

「心労よ!!し・ん・ろ・う!!過度のストレスが原因!当然、身体にもそうとう疲れが溜まってるわね」

リツコの目の前には、縮こまっているミサトとオロオロしているアスカがいた

「シンジ君のストレスの主な原因は、この4つ」
リツコはペンを紙に走らせた

1 家事の過剰な負担
2 ミサトの過剰な飲酒
3 アスカの過剰なスキンシップ
4 ほぼないに等しい自由時間

「ち、ちょっと待ってよ!何よこの過剰なスキンシップって!」

アスカはリツコに申し立てた

「そう・・・これについては前々からまずいとは思ってたのよね、これよ」

リツコはパソコンを操作すると、なにやら映像が出てきた




「シンジー、マッサージやって〜」

「え・・・」

「なぁに?嫌なの?」

「いや・・・その・・・」

「うー、シンジのけちぃ・・・」

「や、やるよ、マッサージ」

「やったー♪じゃ、よろしく」

アスカはリビングにゴロリと転がった
シンジはやれやれとばかりにアスカの足の裏を持った・・・とその時、

「やぁん、どこさわってんの〜。エッチー」

「ど、どこって足の裏だよ!」

「目つきが怪しい〜、今ミサトがいないからって変なことする気じゃないの〜」

「そ、そんなことしないよ!ほ、ほら早く足出して、続けられないよ」

アスカは再びシンジに足を渡した・・・するとまた

「やぁん・・・・・」
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・



「まぁ、これについては前々からストレスになることは知っていたんだけど・・・」

ふぅ、とリツコはため息つくと、

「ちょっっと待ってよ!いつこんなん撮ったのよ!」

アスカは真っ赤になってリツコにつっかかった

「ミサトがこの時いないかったのに一体誰が撮ったのよ?まさか部屋に隠しカメラが・・・」

「隠しカメラ?少し違うわ、今日もあなたはそのカメラを見たはずよ」

「?、どこよ?」

「ぺんぺんよ、彼の首、見た?カメラが付いているわよ」

「う、う、うそっ!じゃ、じゃ、じゃあ・・・まさか・・・」

「あぁ、キスのこと?あれも・・・」
「わぁぁぁぁ!もうやめて!」

アスカは茹蛸になってリツコを止めようとした
もっとも、一番大事な内容がすでに流出しているのだが・・・

「ともかくっ!私はここでシンジ君の別居を推薦します。このままだとシンジ君は胃潰瘍か何かになってしまうわ」

リツコはズバッと言い切った、当然その目は本気だ
しん・・・と部屋が静まり返った

「え〜、そんなのイヤよ!シンちゃんの朝ごはんが食べれないなんて・・・シクシク・・・」

「・・・・・」

「ダメ!あなたたちわかっているの?シンジ君はまだ中学生なのよ!?中学生が心労で倒れるなんて、私初耳よ!悪いけど今回ばかりはさすがにだめ!!」

「お願い!これからは気をつけるから!」

ミサトは必死に食い下がった
理由は何より、シンジの存在が"家族"に等しいものでもあったからだ

「だめっ!後で司令にかけあっておくわ。だいたい、あなたた・・・ち?」
「?どうしたのリツ・・・!!」

リツコが話すのを急に止めたのを不思議に思ってリツコの視線の先をミサトが見ると、ミサトも止まった
ミサトとリツコは驚嘆・・・していた


アスカが・・・"あの"アスカが泣いていた
(あのアスカが・・・な、泣いてるっ!?)
少なくとも、二人は初めてアスカの涙を見た

「ア、アスカさ〜ん・・・どうしたの・・・?」

「ひくっ・・・だって・・・シンジが・・・いなくなっちゃうんでしょ・・・また・・・」

"また"・・・この言葉の意味は、リツコとミサトには痛いくらいまでわかった
またと言うのは・・・自分にとって大切な人が"また"自分のそばからいなくなる・・・と言うことであった

「何も二度と会えなくわけじゃ・・・」

ミサトはアスカをなだめようとしたが、一向に泣き止む気配を見せない
ど、どうしよう・・・
ミサトが思ったとき、リツコが口を開いた

「わかったわ、別居は取り消す」

その瞬間、アスカの顔に光が戻った、がリツコは続けた

「その代わり、2つ条件があるわ。一つ目は"家事を手伝う"ことよ。これは何もシンジ君の為だけではないわ」

「・・・?」

元気の戻ったアスカの顔には?が書いてあった

「あなた、洗濯とか料理とか一人できちんとできる?できるって言うのは自分の分だけではなくって、周りの人の、家族の分の料理とかもよ。将来、あなたが誰かと結婚してその時ミサトみたいに家事が何もできない、なんてあったらその相手はどう思う?」

「う・・・」

「だから、今のうちに練習しておきなさい。将来、シンジ君と結婚することになったとしても、何も家事ができないって知ったらショックでしょね・・・」

アスカは、な、なんであたしがバカシンジなんかと・・・とモジモジしているが、効果があるのは一目瞭然
目つきは真剣そのものになっていた

「二つ目は・・・夜に甘えない!と言うより夜にスキンシップをしないこと!」

「なんでよ〜!いいでしょ、それぐらい・・・」

アスカは反論したが、その事がリツコに火をつけた

「それぐらいじゃすまないから言ってるんでしょう!だいたいあなた、シンジ君が辛いのわからない?」

リツコはアスカを睨み付けていた。アスカはリツコに睨まれて動けなくなっていた
まさに蛇とカエルの構図・・・

「毎晩、あんなことやられたら男の人は普通襲うわよ。間違いなくシンジ君は自分を押さえ込んでいるわ。ましてやミサトがいる時ならまだしも、二人っきりの時なんて・・・A.Tフィールドよりも固い自制心が必要よ。襲わないのは襲ったら強制的に別居させられるのも理由の一つよ・・・でもそんなことよりも、彼はあなたをとても大事に思っているから襲わないのよ」

「・・・・・わかった・・・」

アスカはがっくりとうなだれながらうなずいた
その様子をみたリツコはさらっとこんなことを言った

「料理を一緒に作るって、新婚夫婦みたいよね・・・」

「え・・・」

リツコは、シンジ君の様子を見に行くから二人は家に帰ってなさいと言って部屋を出た


ただ、その直後、アスカがシンジの病室に行きたいとリツコに駄々をこねたのは余談である






405号室・・・シンジの病室
「失礼・・」

ガチャリ

「あ、リツコさん・・・」

シンジはベットに横になっていた
腕には点滴が施されていた

「あの・・・やっぱり、別居ですか?」

シンジは恐る恐るリツコに聞いた
その不安げな顔が、可愛くってリツコはふふっと笑うと、

「条件付だけど、同居は続行よ」

シンジの顔が安堵の色を見せたが、条件・・・?、と思った

「ああ、大丈夫。条件って言うのはアスカに対してだから」

「アスカに?」

「そう、家事を手伝えって言うのと夜シンジ君に甘えないっていうことよ」

あぁ、なんだよかったとシンジの顔に書いてあった
表情でわかるのが面白くって、リツコはまた笑った
ところが・・・

「あ、甘えるっっ!?アスカが!?」

シンジはものすごい勢いで驚いた

「えぇ、アスカ毎晩甘えてるじゃない、あなたに」

「あ、甘えてなんていませんって!ただマッサージとか・・・」

真っ赤になってシンジは否定した

「あなた・・・アスカの彼氏なんだからそれぐらい読み取ってあげなさいよ」

「か、彼氏!!!ぼ、僕が!?」

ま、まさか・・・とリツコは思いつつ、シンジに質問した

「シンジ君・・・あなたアスカと付き合っているのよね?」

答えは・・・「そんなことないですよ!」




"シンジとアスカ"と言えば、ネルフで知らない人はいないほど有名な(バ)カップルである
突然見詰め合う、シンクロテストが始まるぎりぎりまで一緒にいる、などはほぼ毎回あることである
だが、たった今二人が付き合っていないことが発覚した
これは・・・まずいかもしれないわ・・・もしも二人が付き合いだしたりしたら・・・とリツコが思ったが時すでに遅し
二人の同居の続行が決定された





一ヵ月後・・・
「リツコー!お願い〜私に居場所を〜・・・」

「ゴ、ゴメンナサイ・・・こうなると予想はしていたんだけど・・・」

※この部分については、各自ご想像をお願いいたします(笑)





めでたしめでたし・・・(?)




....fin



☆あとがき・・・・・のようなもの

どうも、メラミです
最後まで読んでくださいましてありがとうございます

最初のほうに出てきた野菜、"のらぼう"についてですが、いわゆる伝統野菜と言うものでして、一部の地域でしか知られていません
しかし!こののらぼうという野菜は、おいしく、それでいて栄養豊富という夢のような野菜です!(あくまでも個人の感想です)
野菜の中でも苦味が少ないほうで、お浸しなんてもう・・・(長くなるので割愛させていただきます)

最後になりましたが、全ての主婦(夫)の人々にありがとう!もしかしたら、家族や同居人は"ありがとう"と言わないかも知れません。
でも、きっと感謝しているはずです。僕も、感謝感謝です!

では、また機会があったら!



☆向日葵談

メラミ様に素敵な作品をいただきました。ありがとうございます!
同居解消の危機でしたね。
それにしても、シンちゃんの忙しすぎる毎日に笑ってしまいました。
確かにありそうなスケジュールw
そして、まさかのペンペンスパイ疑惑!!
楽しませていただきました♪

メラミさんへのご感想はこちらまで。





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