Lassen Sie mich nicht    written by MAGI様




最近、ミサトがおかしい全然家にも帰ってこないし何かとても想像つかないような底冷えするような表情をする。
それは、アタシも同じか・・・・




アタシは最近二号機とシンクロできなくなった・・・・・だから、今一人で薄暗い自分の部屋にいる。
アタシは、二号機にシンクロできなくなってからシンジには自分でも信じられないくらい酷いこと酷い言葉を浴びせた。
「アンタなんかがなんでアタシよりシンクロできるのよ!!」
「どうせ、エヴァに乗って戦ってさえいれば傷つかなくてすむなんて考えてるんでしょ」
「アンタなんてどうせ家事しかできないんだからおとなしく家事だけやってればいいのよ」
「ミサトが怖いからアタシに逃げるの?やめてよキモチワルイ・・・・・」
そうアタシは怖かった。
いずれかはくるだろうと思ってたエヴァパイロットとして必要じゃなくなるという現実・・・・・
エヴァに乗っていれば『誰かが見てくれている』
エヴァ自体がアタシの存在意義と言ってもおかしくはない。
アタシは、エヴァとシンクロできなくなってからたくさんのことを考えた自分のことバカシンジのこと・・・・・
アタシはバカシンジのことなんてどうでもいいと思ってた。
ただ・・・『アタシのエースパイロットの座を脅かす者または危険分子』ぐらいにしか思ってなかった。
でも、最近ベッドの中で考えることは『なぜ今まで加地さんがいたところにアンタがいるのよ』ってことアタシが好きだったはずの加地さんが消えて、笑顔のバカがいる。
『なぜ?』
アタシがアイツのことを好きなんてありえない・・・・・・・ありえないはず
でもね・・・・最近アイツが無意識にしてくれる思いやりや優しさに心が締め付けられる。
この痛みは加地さんにはない。
でもだんだん気づいてきたの・・・・・シンジはアタシをありのままのアタシをみてくれる。
だから、シンジだけには我が儘を言ってたんだ。
甘えたかったんだ。
そう考えるとシンジがいない今とても怖くなってくる。
もうシンジがアタシのところに戻ってこないんじゃないかってどうしようもないくらい怖くなる。





「プシュー」『ただいま』





アタシはいつもどうりに絶対にこの寂しさや怖さを出さないように・・・・・

「おっっそい 早くご飯用意しなさいよ!!」
「アタシを餓死させるつもり!?」
「ごめん もうちょっと待ってすぐ用意するからさ」
こんな言葉しか出てこないシンジが帰ってきてくれてうれしい筈なのに・・・





夕飯を食べたあとアタシはテーブルの椅子に座ったままシンジはS-DATをきいてる
こんな近くにシンジがいるのに怖くていつか自分のじゃない誰かと一緒にいるシンジを幸せそうにしてるシンジを自分のものだって言い張ってももう遅い。
それに、エヴァとシンクロできなくなったアタシは日本に居れるかわからない。
それに、もう自分の気持ちに気づいてしまったから・・・・・
だから、アタシは・・・アタシは・・・そんな現実が耐えられなかった


「ねぇシンジ キスしようか?」


「ねぇ聞いてるの?」
「えっなにアスカ?」
「もうキスよ KISS」
「なんで、急に・・・・」
「暇つぶしよ」
「暇つぶしですることじゃないよ」
「いいじゃないの」
「それとも、ママの命日に女の子とキスをするのが嫌なの? 見られてるみたいで?」


そうアタシは決定的な言葉を言った「ママの命日」自分でも心の中にある大きな隙間
埋められるはずもない隙間をアタシは・・・傷つけた


「そんなことないよ!」
「じゃあできるでしょ」
「あぁできるさ」
「じゃあ行くわよ」
「息がこそばゆいから息しないで」
アタシはシンジの鼻をつまみながらキスをした。
その瞬間、身体が震えた
今まで恐怖してたことが頭の中を駆け巡った。


もう泣かないって決めた『涙』が流れてきた・・・・
もう泣かないって決めたのに・・・

アタシは少しの期待をした。
シンジが「もう大丈夫だよ」って言って抱きしめてくれることを願った・・・・

キスをしてる口から嗚咽が漏れた・・・・
アタシの心の叫び・・・・「助けて・・・シンジ」

「アスカ泣いてるの?」
「泣いてなんかないわよ」
アタシのせめてもの強がり
「泣いてなんか・・・・」
「ごめん・・・アスカ」
「え?」
シンジが抱きしめてくれた
離れないように強く強く・・・包み込んでくれた


「もう泣かないでアスカ・・・もう大丈夫だからさ・・・」


嬉しかったシンジが抱きしめてくれたことが・・・・願いが叶ってよかった。
「あのねシンジきいてほしいことがあるの」
「なに?いいよいくらでも聞くよ」
「うん アタシね・・・・エヴァとシンクロできなくなってからずっと独りで考えてたの」
「これからのこと 今のアタシのこと」
「それにシンジのこと ミサトや加地さんやみんなのこと」
「考えているうちにだんだん怖くなってきてどうしようもなくなったときにシンジがアタシの中に出てきたの」
「今までは加地さんがいた場所にアンタ・・・シンジがいたの・・・」
「そう・・なんだ・・・」
「それでアタシは最初戸惑った今まで好きだった加地さんじゃなくてアンタがいることを」
「でもそれは、認めざる負えなかったの」
「なんで?」
「それは、加地さんはただの憧れだったって気づいてからはアンタをどんどん好きになってた」
「・・・・アスカ・・・・」
アタシの今の気持ちを伝えよう・・・・
「アタシが一番好きで心休めることができるのはアンタだけなの・・・・」
もし願いがかなうならば・・・・
「アンタが・・・シンジがよかったらアタシと付き合ってください・・・・」
シンジは自分の答えに全てがかかってると思った。
でも、そんな考えは無用だったらしい・・・・・
「ぼく・・・・僕の方こそよろしくお願いします。」
アスカはシンジの答えを聞くと同時に目に涙をためながらパァーーと笑顔になるとシンジに抱きついた。





1時間後・・・・
プシューという玄関のエアーが抜ける音
「おい葛城 飲みすぎだぞ」 「うっさいわねー」
この言葉の掛け合いが家の中に響いてる頃・・・・
リビングでシンジは非常にまずい状態に陥っていた。
なぜかというと、リビングの床に座り込んだシンジにアスカが抱きついている状態・・・・
例えるなら、まさに幼稚園生ぐらいの子供が母親に泣きついてるような感じ


「ねぇアスカもう大丈夫だろ?」
「・・・・」アスカは黙って首を振って一向に離れる様子はない
「アスカ〜ミサトさんが帰ってきたからさ〜離れよ? ね?」
「・・・・」
そんなときリビングにミサトと加地が入ってきた 。


まったくバカシンジなんだから、このアタシが泣いてるんだからミサトが帰ってきたぐらいじゃ離させないわ・・・

やっぱりアスカは離してくれそうにないや・・・・どうしよう
でも、やっぱり付き合ってるんだし少しは頑張ってみようかな?



「あーシンちゃんとアスカが抱き合ってるーーー!!」
「お?シンジ君やるじゃないか」
「別にこれはなんでもないんですよ」
「ねっアスカそうだよね・・・・」
「ほらもうアスカ立ってよーー」
なによバカシンジ
あたしが泣いて告白したのにそれをなんでもないですってーーー
もう許さないわ

アスカは突然顔をあげると、上目使い&涙目で「イヤぁ」と言いながらシンジに抱きついた。
この言葉を見逃していなかったミサトはキラーンと目が光り・・・・・
「シンちゃーん お姉さんに事情を詳しく教えてちょうだい」
「いえ 別に何でもないんで「そんなわけないでしょッ 今朝まで我侭で強情で暴力的で女の子っぽさをまったく感じさせないアスカがこんなになるわけないでしょ」」
ピクッっとアスカの身体が強張ったのに気が付いたミサトは満足気
でもここでミサトには予想外のことが起きた。
「アスカは確かに我が儘で強情で気の強い女の子かもしれないですけど、ほんとは優しい普通の女の子です!」
明らかにさっきまでのシンジのおろおろした感じではなく、目に見えて怒りが露になっていた。
それもそのはずだろう、例えミサトが帰ってくる数十分前に出来た絆でもこうまでも自分の彼女や好きな人の悪口を言われれば腹も立つだろう。
「でもーそんなにしおらしくなるのはおかしいわよ」
「でももだってもありません!」
「加地さん!早くミサトさんを寝かしてください」
普段ではありえないシンジの剣幕に負けたのか「おっおう わかった まかせろ」と速攻で行動に移した。
「ほら葛城 子供たちに絡んでないでもう遅いんだから寝ろよ」
「わかったわよ 今寝るわよ」と言って自分の部屋に戻って行った
どうやらシンジの剣幕に負けたのは加地だけではなかったらしい・・・・・
「じゃあなー御二人さんごゆっくりな」と言いながら加地は消えていった。


予想外のシンジの言動にアスカは戸惑ってはいたが・・・でも心の奥底は嬉しさでいっぱいだった
シンジはアタシのことをちゃんと見てくれている
                       わかってくれる

「ありがと シンジ」
「え? うん」
今までのアスカでは心では思っていても素直に出せなかった言葉   『ありがとう』
そんな言葉のひとつだけでもアスカの心は変化していた。
もう孤独ではない 
自分には大切な大好きな自分を必要としてくれる人がいるから・・・・


「ねぇシンジもう遅いから寝よっか?」
「うん」


「あのさ、シンジいっしょに寝てくれない?」
「へ?」
シンジの動きが止まった 完全に

「あのさシンジが想像してるような変なことじゃなくてまだシンジと話していたいから・・・・」
「そっかなんだ まだ早いよねぼくたちには うん」
シンジ君自己保管完了
「別にシンジとだったら・・・・・・・・・」
「へ?アスカなんか言った?」
「なんでもないわよ」
「それでどうなの一緒に寝てくれるの?どうなのよ?」
「うん いいよ」
「じゃあシンジの部屋に行くから準備しときなさいよ!!」
アスカはそう言うと自分の部屋に戻って行った。
シンジも自分の部屋に戻った



----数分後----



「シンジ いい?」
「いいよ」
アスカが部屋の中に入ってきたが
「なにこれ・・・・」
「え?なにこれって アスカの布団だけど・・・・」
「なんで一緒に寝るのに布団がいるのよ」
「一緒にって・・・・」
「アタシはさっき確かに言ったわよ 『一緒にって!!』」
「でもそんな・・・・」
「つべこべ言わずに寝る!」
「でもぉ・・・」
「デモもストライキもない!」
なかば無理やりアスカにベットに押し込まれるシンジ君

為されるがままのシンジはアスカがどんな想いでこんなことするのかが分からなかったがすぐに気がついた。
「さっきはかばってくれてありがと バカシンジの割にはかっこよかったわよ」
「そうかな 僕は思ってたことを言っただけなんだよ」
「へーいつからそんな風に思ってたの?」
「二号機でダブルシンクロしたときかな、口では厳しいことを言っててもやっぱり普通の女の子なんだなって思ったんだ」
「そんなときからアタシのことちゃんと見てくれてたんだ」
「ちゃんと見てくれてたってどういうこと?」
「アタシね エヴァのパイロットで活躍してさえいればみんなが見てくれると思ってた」
「でも実際は違ったわ シンクロ率はシンジに抜かれるは二号機ともシンクロできなくなって焦ったわ」
「みんながもうアスカのこと見てくれないと思ったから?」
「それもあるし、もう自分は必要ないんだとも思ったわ」
「なんでそんなこと・・・・・」
「エヴァがアタシの『全て』だったから」

「でも、シンジだけは違った・・・・どんなにアタシがつらく当たってもいつも優しくしてくれた 普通の女の子としてみてくれた」
「それが本当のアスカだと思ったから」
「どうしてそんな風に思えるのよ」
「アスカが僕の一番近くにいて一番近くにいてほしい女の子だったから・・・・」
「ねぇアンタ頭でもおかしくなったんじゃないの?」
「なんでだよ」
「だってそんなこと普段のシンジだったら絶対に言わないわよ」
「素直じゃなかったからね・・・自分の気持ちに」
「そうなんだ・・・」

アタシはシンジの言葉やシンジの温かさを感じるたびに怖くなった。
『もしこの幸せがすぐに消えてしまうんじゃないか? また自分が愛し愛された人がいなくなってしまうのではないか』
そんなことを考えていると涙が自然に流れてきた・・・・

「アスカなんで泣いてるの?」
「怖くなったの また、大切な人がいなくなっちゃうんじゃないかって」

僕はアスカの不安を完全に取り去ることはできないかもしれないけど・・・・
「大丈夫だよ 僕はいつもアスカの一番近くにいるから・・・ずっと一緒だよ」
抱きしめることしかできなくて・・・・・・

アタシはシンジの言葉に耐えきれなくて泣いた・・・
今までの不安がうそのように心が軽くなったような気がした
「ねぇシンジひとつだけお願いがあるの」
「うん なに?」
『Lassen Sie mich nicht.』




....終



☆あとがき

向日葵さんこんなしょぼSS突然送りつけてごめんなさい。

今回のSSはアスカの心の不安をシンジが少しでも減らしてあげることができるならというのがコンセプトなんですけど・・・・・
凄くしょぼいSSになってしまいすみませんでした。



☆向日葵談

MAGI様からステキな作品をいただきました。ありがとうございます。
「Lassen Sie mich nicht」は「私のそばにいて」って意味だと思うのですが、合ってます?w
もしくは「私のそばからいなくならないで」?
MAGI様がお書きになる作品は、いつも心温まる幸せなラストですね。
読ませていただく私もとても幸せな気持ちになります。

MAGIさんへのご感想はこちらまで。




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